16 「桃園結義」の物語
単著
2000年平成12年３月
（新潟大学教育学部国語国文学会）『新大国語』第26号21〜35頁
『三国志演義』の冒頭に見られる「桃園結義」の場面を取り上げ、『三国志平話』や「劉関張桃園三結義」雑劇と比較しながら、『三国志演義』の「桃園結義」の場面がどのような過程を経て成立したのかを考察した。
まず『三国志平話』が「桃園結義」の場面と「劉関張桃園三結義」雑劇のあらすじを確認した。次に『三国志平話』と「劉関張桃園三結義」雑劇の内容を比較した。その結果、この両者では、劉備・関羽・張飛の三人の登場順が一致することなどから、両者の内容はきわめて類似性が高いことを指摘した。さらに『三国志演義』と比較を行った。その結果『三国志演義』は『三国志平話』とより深い関係にある個所、「劉関張桃園三結義」雑劇とより深い関係にある個所の両様が見られ、また正史『三国志』からの引用もあった。このことから、『三国志演義』の作者は、元明の頃に知られていた「三国志物語」を基礎として、そこに正史『三国志』を巧みに引用しながら『三国志演義』を書き上げたことを指摘した。