19 『三国志平話』と『三分事略』
単著
2003年平成15年11月
（新潟大学教育人間科学部）『新潟大学教育人間科学部紀要』第６巻第１号１〜11頁
独立行政法人国立公文書館に蔵される『三国志平話』と天理図書館に蔵される『三分事略』は、同版式・同内容の２書である。しかし両者を子細に比較してみると、文字の異同が少なからず見つかることも事実である。その両者の違いを細かく検討してみると、『三国志平話』の方が『三分事略』よりもすぐれている例・『三分事略』の方が『三国志平話』よりもすぐれている例・異同はあるがどちらでも文章が通じる例、が指摘できる。このことから、『三分事略』は時代が下がってからの覆刻本ではあるが、直接『三国志平話』を底本にしたものではないと考えられる。
また『三国志平話』の誤字を検討してみると、北方方言の音韻の影響によって文字を誤っていると思われる例が多数存在する。このことから、『三国志平話』の本文は、北方地域の文化の影響を受けて成立したものと考えられる。
そして『三国志平話』のような文章をしたテキストは多数存在していて、その中で現存しているものが『三国志平話』と『三分事略』なのであろう。