27 上海図書館蔵『三国志演義』残葉について （査読付）
単著
2007年平成19年７月
『三国志研究』第二号（三国志学会）
上海図書館所蔵の嘉靖刊『陶淵明集』の表紙・裏表紙は裏打ち補修がなされており、その裏打ち用紙として『三国志演義』のあるテキストの一葉が用いられている。（以下「残葉」と称する。）この『陶淵明集』は刊行後装丁が補修されており、その時に表紙も裏打ちされたものであろう。装丁が補修された次期は定かではないが、『陶淵明集』の様相からそれほど時代が下がったものではない。よって残葉も『三国志演義』の比較的古い版本の一葉である可能性は高い。しかしながら残葉の文章を『三国志演義』諸版本と比較してみると、二十四巻系に属する文章であり、周曰校本にきわめて近い。これらのことから、残葉の元の版本が嘉靖本よりも古いという確かな証拠が存在しているわけではない。確かに残葉は『三国志演義』の古い刊本の一部である可能性は高いが、必ずしも成化・弘治年間のものだと断定することもできない。嘉靖元年以降、嘉靖年間であるという可能性も十分考えるべきである。