35 与畊堂費守斎刊『三国志伝』の性質
単著
2010年平成22年３月
『東アジア出版文化研究 ほしづくよ』（東北大学東北アジア研究センター）P97-P108
『新刊京本全像演義三国志伝』二十巻は明代万暦年間の書肆与畊堂費守斎によって刊行された『三国志演義』の一版本である。この本はかつて東京・神保町の山本書店より売り出されていたが、その後東北大学東北が兒阿研究センターの所蔵となった。費守齋本は『三国志演義』諸本中の刊本に属するものであり、かつ出版年も嘉靖本や葉逢春本に比べてずいぶん遅れる。したがって『三国志演義』諸版本変遷史の上では、必ずしも特別重要な版本ではない。しかし、この本は、いくつかの書肆が協力して出版事業を行っていた一つの例であること、有名な文人・読書人が積極的に当時の出版文化の担い手となっていたことを示す例であることから、この本の出版状況は明代末期の出版文化に対して重要な問題を投げかけている。