58 『李卓吾先生批評三国志真本』について
単著
2016年９月
『狩野直禎先生米寿記念三国志論集』，P315-P343（三国志学会）
『李卓吾先生批評三国志真本』と題する版本は、従来「宝翰楼本」と称されていた。しかし「宝翰楼」の名を冠するものは、現存する『真本』の数種類のうちわずか一本であり、『真本』をすなわち「宝翰楼本」と呼ぶことは、必ずしも正しくない。
「真本」六本の印刷状態を比較したところ、、①中国国家図書館蔵本・②上海図書館蔵本・③北京師範大学蔵本・④イェール大学蔵本・⑤京都大学文学部蔵本Ａ（請求番号D
VI b 8-22）・⑥京都大学文学部蔵本Ｂ（請求番号D VI b
8-8）の順序で印刷された。そして、「真本」は李卓吾本甲本の系統に近い本を底本として成立し、「真本」が編纂されるにあたり本文を読みやすく改めて成立した一本である。また「真本」では独自の本文解釈がなされている。すなわち、「真本」は「李卓吾先生批評三国志」の中において、独立した一本であると考えられる。