82 張頴傑氏所蔵『三国英雄志伝』について
単著
2023年９月
『大上正美先生傘寿記念三国志論集』（三国志学会）、P281-P307
2022年3月、首都師範大学の周文業氏より『三国志演義』のある版本の画像が送られてきた。それはこれまで見たことのない、従来の『三国志演義』版本研究の中でも取り上げられたことのない、新発見の新資料であった。この本は書名が「三國志傳」となっているが、簡本「英雄志伝グループ」の中の一本である。文章を検討したところ、劉興我本と密接な関係にあるが、必ずしも劉興我本を底本とするものではなく、両者は並列の関係にあることが分かった。しかもこの本は明刊本『三国英雄志伝』のより古い様相を保っている。同時に「英雄志伝グループ」の「先繁後簡」諸本とにたところもある。この本は巻十三・十四しか残っていないが、残存する２巻の中でも特殊な様相が見て取れる。残本であり、刊行時期もそれほど早いものではないが、『三国志演義』版本研究に重要な手がかりを与えてくれる、きわめて価値の大きい版本である。