１，著書
（１）著書
3 『三国志演義』版本の研究
単著
1998年平成10年12月 汲古書院 総428頁
従来、中国明代の白話長編小説の中でも『三国志演義』の場合は書誌学的にあまり問題がないとされ、版本が抱えている様々な問題を詳しく検討されることはほとんどなかった。 本書は現存する『三国志演義』諸版本を網羅的に調査し、従来知られていなかった『三国志演義』の書誌学的な問題点を指摘して、諸版本間における内容・文章の違い、相互の関係を考察する。
「序論」では、従来の『三国志演義』の諸版本に関する研究を概観し、その問題点を指摘する。「本論」第一章では『三国志演義』諸版本は大きく三つの系統に分けられることを示す。第二章・三章・四章では三つの系統ごとに、それぞれの系統に属する版本群を取り上げ、それらの内容・文章の違いを指摘し、その系統内における諸本相互の関係を明らかにする。第五章では三系統の諸版本の関わりについて考察する。まず『水滸伝』と『西遊記』の文繁本と文簡本の文章を精密に検討して、文繁本をもとに文簡本が成立したことを指摘し、文繁本に対する文簡本の特徴を考察する。そして原「三国志演義」から現存諸本が成立するまでの分化の過程を明らかにする。「結論」は本書全体の総括として、系統図を示した上で、『三国志演義』成立後も文章が書き換えられていった要因を考察する。